がけ地に隣接する物件を売買する際の注意点

こんにちは!

神奈川県横浜市の走る不動産鑑定士です!

静岡県熱海市で昨年7月に発生した大規模土石流災害は記憶に新しく、衝撃的な事故だったのではないでしょうか。

伊豆山地区を流れる逢初川の上流部に造成された「盛り土」が大きく崩れ落ち、甚大な被害をもたらしました。

あれほど大規模な崖地ではなくても、神奈川県内も崖地に隣接する住宅地や崖地の上に造成された住宅地は数多く存在します。

近年、上記の事件以外にも、台風・暴風雨などの自然現象によってがけ崩れが発生し、建物に甚大な被害を及ぼす災害が少なくありません。

がけ崩れによる被害から人命や財産を守るため、いろいろな法規制があります

主なものとしては以下のようなものがございます。

・「建築基準法」:崖崩れ等の被害の恐れのある場合に、擁壁の設置等を求める

・「宅地造成工事規制法」一定規模の切土・盛土等の工事に都道府県知事の許可を求める

・「砂防法」:砂防指定地内の土地の掘削、立木の伐採等、土砂災害を誘発する行為の制限

・「急傾斜地崩壊防止法」:指定された地域内で一定、掘削・盛土などの工事に都道府県の許可を求める

・がけ条例:自治体により異なるが、一定の傾斜度や高さのがけの上下の一定範囲に建築物する場合に擁壁等の設置を求める

特に、「土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律(以下、土砂災害防止法)」に関しては注意すべきポイントが多いので以下で見ていきたいと思います。

土砂災害防止法は平成13年4月1日に施行されました。土砂災害から国民の生命・身体を守るため、急傾斜地の崩壊・土石流・地すべり等の土砂災害の恐れのある一定の区域に対して「土砂災害警戒区域」「土砂災害特別警戒区域」を指定します。

土砂災害警戒区域は一般的に「イエローゾーン」と呼ばれます。土砂災害防止法に基づいて「土砂災害の際に住民の生命または身体に危害が生ずる恐れがある土地の区域」で、ハザードマップ作製による周知への徹底等、警戒避難体制を特に整備すべきエリアとされています。

土砂災害特別警戒区域は一般的に「レッドゾーン」と呼ばれ、より危険度の高いエリアに関して指定されます。「土砂災害警戒区域のうち、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生じるおそれがあると認められる土地の土地の区域」で、一定の建築の許可制・居室を有する建築物の構造の制限・建築物の移転等の勧告や支援措置などが義務付けられます。

これらの区域の指定は、土砂災害の恐れのある地域について都道府県が基礎調査を行い、関係市町村の意見を踏まえ、都道府県知事が指定します。

まだまだ基礎調査が追い付いていないとの話もあり、今後も土砂災害警戒区域・土砂災害特別警戒区域は増えていくものと予測されます。

さて、このような土地を取引する際にはどのような点に注意すべきでしょうか。

以下に三点ほど述べさせていただきます。

  • 宅建業者はこのような区域内の土地を取引する際、売買契約の重要事項として説明することが義務付けられます。土砂災害発生のリスクの存在や建築制限等は、取引当事者の意思決定に重大な影響を与える事項に該当するからです。

いざ契約時点になって知るようなことがないよう、契約前にぜひ自治体のハザードマップ等で確認しておきましょう。また上記の基礎調査の結果も自治体には公表義務があります。基礎調査の結果次第では区域の変更等もありますので、周辺地域も含めてしっかりと把握しておくことをお勧めします。

  • また土砂災害特別警戒区域に関しては、2021年10月よりフラット35Sの適用除外となっております。フラット35Sは住宅金融支援機構が民間の金融機関と連携し、一般的なものよりも金利が優遇されている人気の住宅ローンです。

この点は大きな注意が必要です。

  • 最後に売買契約後のお話になりますが、土砂災害は「火災」に分類され、いずれの区域も火災保険の適用範囲ではあります。ただし火災保険の通常プランには水災が組み込まれていない場合があります。火災などに比べて水災は頻度が低いと判断され保険料との兼ね合いで除外されるケースがあるためです。

そのため補償内容について事前にきちんと調べておく必要があります。

以上のように、がけ地に近接する土地はいろいろな法規制があり、売買に当たっては注意すべき点が多いです。

不動産売買は高額取引なので、ぜひ準備して後悔のない物件購入をお勧めします。